岡山県重要無形文化財保持者
備前焼 陶芸家 山本 出
■備前焼の可能性を求めて
学生時代に彫塑を学び、その後、父である人間国宝(故)山本陶秀に師事し陶芸の道に入る。独立後間もなく素材である「土」の新しい可能性を追求し、独自の個性ある作陶法を打ち出していく。「叩込」そして「土」の色調を独創的に表現する「出彩」(しゅっさい)を確立。その後、フランス・ブルゴーニュで出会った「土」を入手し探求を続け、斬新なフォルムの造形により、「積上」(つみあげ)を確立。受け継がれてきた備前を根底に、山本出の確立した独自の手法を駆使しながら、新しい風を吹き込んだ一人として現在も活躍する陶芸家である。
■次世代への技法の継承
彼の二人の息子達(周作・領作)は父の技法を受け継ぎ、それぞれの感性を取り入れ意欲的に制作活動を行い、魅力ある物作りを期待されている。
陶 歴
1944年
岡山県備前市に人間国宝(故)山本陶秀の四男として生まれる
1967年
武蔵野美術大学彫刻科卒業
1968年
武蔵野美術大学彫刻科専攻科卒業
1970年
帰国後、父・人間国宝(故)山本陶秀に師事陶芸の道に入る
1975年
伊部に窯を築き陶芸家として独立 独自の「叩込」に取り組む
1979年
日本工芸会正会員となる
1980年
パリ「ル・ノートル」シェフ、セルジュ・フリボー氏とコラボレーションし、
和食器にフランス料理を盛った「フランス料理を食べる会」を開く(東京)
第27回日本伝統工芸展にて『備前叩込梅文大鉢』 日本工芸会奨励賞受賞
1982年
岡山県展委嘱となる
独自の「出彩」に取り組む
1983年
中日国際陶芸展にて『備前土出彩大鉢』奨励賞受賞
米国ワシントン・スミソニアン博物館及び英国国立ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館における
日本現代陶芸展『備前叩込黒薔薇文大鉢』・『備前叩込梅文大鉢』招待出品
日本工芸会伝統工芸三十年の歩み展に日本工芸会受賞作品『備前叩込梅文大鉢』招待出品
『備前叩込黒薔薇文大鉢』
1986年
日本工芸会中国支部展にて日本工芸会理事長賞受賞
1989年
独自の「積上」に取り組む
1992年
日本工芸会中国支部審査員
岡山県展にて『備前土積上出彩椿文花器』山陽新聞社大賞受賞
1994年
NHK中国地方放送番組審議会審議委員(1994〜1998)
1995年
仏・ブルゴーニュ州・ヨーヌ県「ラティー城」にて制作、窯焚きに挑む
NHK衛星第1放送列島スペシャル『備前焼 ブルゴーニュへ』放映
(HNK岡山放送局同行取材 同局制作)
1996年
仏・ブルゴーニュ州・ヨーヌ県「ラティー城」にて「山本出 作陶展」開催(6/22〜9/15)
天満屋岡山店葦川会館にて「フランス帰朝記念 山本出 作陶展」開催(10/17〜10/21)
天満屋葦川会館にて「フランス帰朝記念 山本出 作陶展」
ラティー城にて「山本出作陶展」
1998年
山陽新聞社主催による備前焼パリ里帰り展(東京・広島・岡山)『積上花器』招待出品
2000年
東広島美術館『積上花器』買上
南仏・プロバンス・バンドル市陶芸展覧会招待出品
同陶芸家交流会並びにフォーラムにおいて講師として招かれる
伊勢神宮へ積上花器『抱擁』奉納
2006年
第64回山陽新聞賞(文化功労)受賞
2012年
岡山県重要無形文化財保持者に認定
※「土」の表記は、正しくは右上に点のある俗字体です。
メディア紹介
1993年
講談社「現代日本の陶芸」第9巻 〜伝統と想像の意匠Ⅲ〜に掲載
1995年
仏・ブルゴーニュ州・ヨーヌ県新聞にラティー城で制作・窯焚きの記事掲載
NHK BS1
列島スペシャル「備前焼 ブルゴーニュへ」
〜ある陶芸家の新しい挑戦〜放映
1996年
仏・陶芸誌「céramique」7月号に掲載
2000年
NHK BS2
やきもの探訪「抱擁のフォルム 山本 出」
〜岡山 備前市〜放映
2003年
ANA国際線 「翼の王国」に掲載
2005年
家庭画報「KATEIGAHO INTERNATIONAL EDITION」に掲載
仏・ブルゴーニュ州・ヨーヌ県新聞
仏・陶芸誌「céramique」
右:ANA 「翼の王国」
左:家庭画報「KATEIGAHO INTERNATIONAL EDITION」
新しい備前焼を求めて
映像提供:NHK
■
積上(つみあげ)
備前の土と仏・ブルゴーニュの土を練り合わせた「土」を
薄い板状にし、幾層にも積み上げて形成する独自の技法。
■
出彩(しゅっさい)
備前の土に顔料を練り合わせ豊かな色調を生む「色土」を
用いて叩き込んで形成する独自の技法。
■
仏・ブルゴーニュの土
山本出が仏・ブルゴーニュ州で出合い入手した土。
分析した結果、備前の土とほぼ同じ成分でカオリン(粘土鉱物)をより多く含み、土質が非常に滑らかであり、備前の土に比べて収縮率が小さいという利点を持つ。備前の土にブルゴーニュの土をブレンドすることにより「積上」は完成した。
この備前とブルゴーニュのブレンド土は、備前の土味の持つ風合いの良さを壊すことなく保ち、滑らかであることが魅力となっている。